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「機械学習エンジニアになりたいが、何から手を付ければいいのか分からない」
「数学を一から勉強し直すべきなのか、それとも先にコードを書くべきなのか」
この記事は、順番が決められずにいる方のために書きました。
結論から言うと、数学より先にコードです。Pythonとデータを扱うライブラリから始めて、公開データで予測モデルを1つ最後まで作り切ってください。数学は、必要になった範囲から埋めるほうが続きます。
この記事では、未経験から機械学習エンジニアになるまでの手順を5段階に分け、各段階で何をどこまでやるかを示します。
RaiseTech(レイズテック)は、受講者数2,500名超え!現役エンジニアが講師を務めるAIエンジニア育成のオンラインスクールです。未経験からの学習を支援してきた現場の視点でお伝えします。
機械学習エンジニアの仕事と、求められるもの
やることは「モデルを作ること」だけではありません。データを用意し、評価し、本番で動かし続けるところまでが範囲です。
仕事の重心は、思われているより前後にあります。
| 工程 | やること | 時間の比重 |
|---|---|---|
| 課題の定義 | 何を予測すれば業務が変わるかを決める。評価の基準を置く | 軽視されがちだが重い |
| データの準備 | 集める、欠けを埋める、特徴量を作る | 最も時間がかかる |
| モデルの構築 | 手法を選び、学習させ、精度を比べる | 思っているより短い |
| 評価 | その精度が業務で意味を持つかを判断する | 経験が要る |
| 運用 | 本番で動かし、精度の劣化に気づく仕組みを作る | できる人が少ない |
学習を始めるとモデル構築に時間を使いがちですが、実務で差がつくのはデータの準備と評価です。どんな手法を選んでも、入れるデータが間違っていれば結果は出ません。
そしてもう1つ。言語を覚えることはスタートライン。現場で価値が出るのは、何を作るかを設計し、AIに正しく指示し、出力をレビューして品質を担保する力です。手法の知識だけでは足りません。
→ 職種の全体像は機械学習エンジニアとはで解説しています。
手順①:Pythonとデータの扱いから始める
最初の3〜4週間でやるのは、Pythonの基礎とデータの操作だけです。機械学習にはまだ入りません。
- Pythonの文法:変数、条件分岐、繰り返し、関数、リストと辞書。クラスは後回しでよい
- pandas:表形式のデータを読み込む、絞り込む、集計する、結合する
- NumPy:配列の操作。pandasの裏側で何が起きているかが分かる
- matplotlib:データを図にする。分布を見る習慣をつける
この段階で手を止めないコツは、自分が興味のあるデータを使うことです。チュートリアルのサンプルデータだけだと、何のためにやっているか分からなくなります。公開データでも、自分が結果を知りたいテーマを選んでください。
→ 必要なPythonの範囲はAIエンジニアに必要なPythonはどこまで?にまとめています。
手順②:予測モデルを1つ、最後まで作り切る
ここが最初の山です。精度は問いません。データを入れて、学習させて、評価まで通すことが目的です。
やる順番は固定でかまいません。
- データを分ける:学習用と検証用に分ける。なぜ分けるのかを説明できるようにする
- 単純な手法から試す:線形回帰やロジスティック回帰。いきなり深層学習に行かない
- 評価する:正解率だけを見ない。何を間違えているかを確かめる
- 改善する:特徴量を足す、手法を変える。変えた理由を記録する
4番の「記録する」が後で効きます。選考で聞かれるのは精度の数字ではなく、なぜその手法を選んだかです。試行錯誤の過程が残っていれば、そのまま話す材料になります。
この段階で、評価指標の意味が分からなくて詰まります。そこで初めて数学が必要になります。順番が逆だと、使い道の分からない数式を延々と追うことになります。
手順③:必要になった数学を埋める
証明が書けるレベルまでは求められません。使う範囲から逆算してください。
| 分野 | どこで必要になるか | 到達の目安 |
|---|---|---|
| 線形代数 | データが行列として扱われる理由。次元削減 | 行列の積と、何をしているかのイメージ |
| 微分 | モデルがどう学習しているか(勾配降下法) | 偏微分の意味。手で解けなくてよい |
| 確率・統計 | 評価指標の読み方。データの偏りの判断 | ここが最も実務で効く |
優先順位は確率・統計が1番です。精度が高いモデルが本当に良いのかを判断するには、ここが要ります。線形代数と微分は、仕組みの理解として押さえておけば足ります。
大学の教科書を頭から読む必要はありません。手順②で詰まった箇所から引いていくほうが、記憶に残ります。
→ 必要な範囲はAIエンジニアに数学はどこまで必要?で詳しく扱っています。
手順④:人に見せられる制作物にする
作っただけでは材料になりません。説明できる形にして、公開してください。
選考で見られるのは、次の4つです。
- 何を解こうとしたか:課題設定。誰のどんな困りごとかを1文で言えるか
- なぜその手法を選んだか:他に何を試して、なぜそれをやめたか
- どう評価したか:どの指標を使い、なぜその指標なのか
- 動く状態か:READMEがあり、他人が再現できるか
数を増やすより、1つを説明できる状態にするほうが評価されます。GitHubに置きっぱなしのノートブックが3つあるより、READMEが整った1つのほうが強い材料になります。
→ 作り方はAIエンジニアのポートフォリオ作り方にまとめています。
手順⑤:運用まで触れておく
ここまでやる人は多くありません。だから差がつきます。
作ったモデルを、動き続ける形にします。難しいことをする必要はありません。
- APIにする:FlaskやFastAPIで、外から呼べる形にする
- クラウドに置く:自分のPCではなく、常時動く場所で動かす
- 記録を残す:いつ、どんな入力が来て、どう返したかをログに残す
- 劣化に気づく:精度が落ちたときに分かる仕組みを、簡単でよいので作る
この経験があると、面接で話せる内容が変わります。「作りました」ではなく「動かし続けました」と言える人は限られます。
→ 運用側の役割はMLOpsエンジニアとはで解説しています。
どのくらいの期間がかかるか
確保できる時間で変わります。期間そのものを目標にしないでください。
| 1日の学習時間 | 手順①〜④までの目安 | 現実的なのは |
|---|---|---|
| 1時間 | 1年前後 | 残業がある。長期戦になる前提で組む |
| 2時間 | 半年〜10か月 | 平日夜に安定して取れる人 |
| 4時間以上 | 3〜5か月 | 休職中、学生、時間を作れる人 |
幅があるのは、詰まったときに止まる時間が人によって違うためです。進んだ時間より、止まった時間の長さが期間を決めます。質問できる相手がいるかどうかで、同じ学習時間でも到達点が変わります。
→ 総学習時間の考え方はAIエンジニアになるまでの勉強時間は?にまとめています。
やらなくていいこと
先に外しておくと、手順①〜⑤に時間を回せます。
| やりがちなこと | なぜ後回しでよいか |
|---|---|
| 数学を一から学び直す | 使う範囲が限られる。必要になってから引くほうが速い |
| 論文を読む | 研究職を目指すなら必要。実装中心の仕事では優先度が低い |
| 深層学習から始める | 単純な手法で足りる課題が多い。比較の基準が作れなくなる |
| 資格を先に取る | 制作物が無いと面接で話す材料にならない。作ってから足す |
| 環境構築にこだわる | 最初はColabで十分。ローカル環境で止まるのが最ももったいない |
5行目は特に多い失敗です。環境構築で3日溶かすより、ブラウザで動く環境で先に進んでください。ローカル環境は、必要になってから整えれば間に合います。
→ 未経験からのルート全体は機械学習エンジニアに未経験からなるには?、必要なスキルの全体像はAIエンジニアに必要なスキル一覧で整理しています。
よくある質問
機械学習エンジニアになるには何から始めればよいですか?
Pythonの基礎と、データを扱うライブラリから始めてください。数学を先に完璧にしようとすると手が止まります。動かしながら必要になった数学を埋めるほうが続きます。最初の目標は、公開データで予測モデルを1つ最後まで作り切ることです。精度は後から上げられます。
数学はどこまで必要ですか?
線形代数・微分積分・確率統計の基礎は必要ですが、証明が書けるレベルまでは求められません。実務で効くのは、評価指標の意味を理解して手法を選べることです。大学レベルの数学を一から学び直すより、使う範囲から逆算して埋めるほうが早く進みます。順番が大切です。
未経験から何か月くらいかかりますか?
確保できる時間によって大きく変わります。1日2時間の学習で、基礎から制作物まで到達するのに半年から1年が一つの目安です。ただし期間より、作ったものを説明できる状態にできたかどうかで選考の結果が決まります。期間そのものを目標に置かないでください。
AIエンジニアと機械学習エンジニアは何が違いますか?
呼び分けは会社によって揺れます。実務上は、機械学習エンジニアがモデルの構築と評価に軸足を置き、AIエンジニアは既存のAIを組み込んだシステム開発まで含むことが多くなっています。求人票では名称ではなく、業務内容の記載のほうで判断してください。
資格は取ったほうがいいですか?
必須ではありません。選考で見られるのは制作物と担当範囲です。ただし未経験のうちは職務経歴で示せるものが無いため、書類選考を通る確率を上げる材料にはなります。制作物を作ってから足す、という順番にしてください。逆にすると、面接で話す材料が残りません。
まとめ|数学より先にコード、作ってから評価を学ぶ
順番を間違えなければ、未経験からでも到達できます。
- Pythonとデータの操作から(3〜4週間)。機械学習にはまだ入らない
- 予測モデルを1つ最後まで作り切る。精度は問わない。変えた理由を記録する
- 詰まった箇所から数学を埋める。優先は確率・統計
- 説明できる制作物にする。数より、1つを動く状態で
- 運用まで触れる。ここまでやる人は少ないので差がつく
やらなくていいのは、数学の学び直し、論文、深層学習からの着手、資格の先取り、環境構築へのこだわりです。止まった時間の長さが期間を決めます。詰まったら手放す基準を、先に決めておいてください。
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