「未経験でIT転職して失敗した」
検索するとたくさん出てきますが、どれも個人の話です。何がどれくらい起きているのかは分かりません。
実は「失敗」を数えた公的な集計が1つだけあります。ハローワークに寄せられた「求人票の記載内容と実際の労働条件が違う」という申出の件数です。令和6年度は全国で3,297件でした。
この集計を開くと、はっきりした偏りが出ています。申出の内容で多いのは、賃金(20.2%)・就業時間(14.4%)・職種や仕事の内容(12.9%)。上位3つで47.5%を占めます。そしてこの3つは、どれも求人票に書いてある項目です。
以下、件数と推移、中身、原因、産業別の順に見て、最後にこの数字で言えないことを書きます。
「失敗」を数えた公的な集計は、これ1つ
転職の失敗そのものを数えた統計はありません。いちばん近いのが、厚生労働省が毎年公表しているこの集計です。

| 年度 | 申出等の件数 |
|---|---|
| 平成29年度 | 8,507件 |
| 平成30年度 | 6,811件 |
| 令和元年度 | 5,778件 |
| 令和2年度 | 4,211件 |
| 令和3年度 | 3,870件 |
| 令和4年度 | 3,890件 |
| 令和5年度 | 3,761件 |
| 令和6年度 | 3,297件 |
8年で8,507件から3,297件へ、61%減っています。令和3年度以降はほぼ横ばいで、3,300〜3,900件の幅に収まっています。
この数字は「求職者が、聞いていた条件と違うとハローワークに申し出た件数」です。つまり入ってみたら違った、が実際に起きて、本人が行動に移した数です。感想ではありません。
減っている理由をこの資料だけで断定することはできません。求人票の記載が改善した可能性も、申し出る人が減った可能性も、ハローワーク経由の求職そのものが減った可能性もあります。ここでは水準と中身だけを見ます。
中身の上位3つは、求人票に書いてある項目
ここがこの集計のいちばん使えるところです。何について食い違ったのかが、項目別に出ています。

| 申出の内容(主なもの) | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 賃金に関すること | 929件(20.2%) | 1,108件(21.6%) |
| 就業時間に関すること | 661件(14.4%) | 711件(13.9%) |
| 職種・仕事の内容に関すること | 591件(12.9%) | 644件(12.6%) |
| 選考方法・応募書類に関すること | 470件(10.2%) | 642件(12.5%) |
| 休日に関すること | 320件(7.0%) | 332件(6.5%) |
| 雇用形態に関すること | 274件(6.0%) | 280件(5.5%) |
| 就業場所に関すること | 207件(4.5%) | 219件(4.3%) |
| 雇用期間に関すること | 201件(4.4%) | 215件(4.2%) |
| 社会保険・労働保険に関すること | 152件(3.3%) | 169件(3.3%) |
上位3つで47.5%。賃金・就業時間・職種は、求人票に必ず書いてある3項目です。
「スキルが足りなかった」「向いていなかった」という項目は、この集計に出てきません。実際に申し出まで至っている食い違いは、適性の話ではなく条件の話です。
年度を比べても順位はほとんど動きません。令和5年度も賃金・就業時間・職種の順です。この3つは毎年同じところで食い違っています。
原因の内訳|4割以上が「求人票と実際が違う」
次に、なぜ食い違ったのかの内訳です。
| 要因(主なもの) | 令和6年度 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 求人票の内容が実際と異なる | 1,478件 | 44.8% |
| 求人者の説明不足 | 932件 | 28.3% |
| 言い分が異なる等により要因を特定できないもの | 373件 | 11.3% |
| 求職者の誤解 | 364件 | 11.0% |
| ハローワークの説明不足 | 59件 | 1.8% |
7割以上(44.8%+28.3%)が、求人を出した側に理由があります。求人票そのものが実際と違っていたか、書いてはあるが説明が足りなかったか、です。
一方で「求職者の誤解」も364件、11.0%あります。10件に1件は、書いてあったものを読み違えた、または聞かずに決めた側の問題でした。
この11.0%は、応募する側が減らせる部分です。そして残りの7割についても、「入る前に確かめた人」は申し出る前に気づけます。
なお「割合」の列は、公表されている件数を全国計3,297件で割ったものです。1件の申出が複数の要因に計上されることがあるため、合計は100%になりません。
情報通信業は72件|IT固有の問題ではない
IT業界だけが特別にひどい、という事実はこの集計からは出てきません。

| 産業(件数の多い順・主なもの) | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 医療、福祉 | 725件 | 687件 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 470件 | 555件 |
| 卸売業、小売業 | 415件 | 514件 |
| 製造業 | 351件 | 451件 |
| 運輸業、郵便業 | 296件 | 301件 |
| 建設業 | 208件 | 248件 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 179件 | 198件 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 137件 | 153件 |
| 情報通信業 | 72件 | 113件 |
情報通信業は72件で、全国計3,297件の2.2%です。前年度の113件からも減っています。
ここは読み方に注意が要ります。件数が少ないのは、トラブルが少ないからとは限りません。ハローワーク経由の求人そのものが産業によって多い少ないがあり、ITは民間の転職サービス経由が多いためです。
ただし「ITだから求人票と実際が違う」という特別な構造は、少なくともこの集計には出ていないとは言えます。食い違いは全業種で起きていて、中身も賃金・就業時間・職種に集中しています。
入る前に確かめられる3項目
上位3つは、どれも応募の段階で確かめられます。順に書きます。
| 項目 | どこを見るか | 面談で聞くこと |
|---|---|---|
| ① 賃金(20.2%) | 月給の内訳。固定残業代が含まれているか、含まれるなら何時間分か | 「提示額のうち、固定残業代はいくらで何時間分ですか」 |
| ② 就業時間(14.4%) | 所定労働時間と、裁量労働制・フレックス・シフトのどれか | 「直近3か月の、この職種の平均残業時間はどれくらいですか」 |
| ③ 職種・仕事の内容(12.9%) | 業務内容の書き方。「IT業務全般」のように広いほど、配属の幅も広い | 「入社後3か月、具体的にどの工程を担当しますか」 |
①がいちばん多く、いちばん確かめやすい項目です。固定残業代は求人票に記載するルールになっていますが、金額と時間数まで読まずに応募する人は少なくありません。
②は求人票だけでは分かりません。制度名までは書いてありますが、実際の残業時間は書いていないためです。聞かないと分からない項目は、聞くしかありません。
③は書き方の広さを見ます。広く書いてある求人は、それだけ配属の幅が広いという意味です。配属のされ方そのものは契約の型でも変わるので、SESの案件ガチャは本当?もあわせてご覧ください。
求人票の「変更の範囲」という欄の読み方は未経験エンジニアの後悔で別に整理しています。
この数字で言えないこと
限界を3つ書いておきます。ここを飛ばすと数字を読み違えます。
| 言えないこと | なぜか |
|---|---|
| 転職の失敗件数ではない | これは「求人票と実際が違う」という申出の件数。スキル不足や人間関係といった他の失敗は入っていない |
| ハローワーク経由に限られる | 民間の転職サービスや求人サイト経由の分は含まれない。ITはそちらの比率が高い |
| 「未経験者が」とは言えない | この集計に経験の有無の区分はない。全年代・全経験層がまざっている |
そのうえで使える理由は「申し出た」という行動を伴った件数で、毎年同じ定義で、項目別・要因別・産業別に分かれて出ているからです。体験談にはこの3つがありません。
入った後に実際どうなるかは未経験エンジニアの現実、30代での転職は30代の未経験IT転職に、それぞれ別の公的データで整理しています。
→ 求人そのものが増えているのか減っているのかは未経験エンジニアは増えすぎ?で、厚生労働省の職業安定業務統計から見ています。
未経験からITに入るなら、いまはAI側から
食い違いは条件の話なので、確かめれば減らせます。そのうえで、どの領域に向かうかで、選べる求人の数そのものが変わります。
開発系の中でも、AIを使った開発は求人が増えている領域です。しかも未経験から入る人にとって不利が小さいという特徴があります。全員にとって新しい技術なので、経験年数の差が他の領域ほど効かないためです。
→ 職業としての全体像はAIエンジニアとは?完全ガイド、将来性はAIエンジニアの将来性、飽和しているかどうかはAIエンジニアはオワコン?にデータでまとめています。
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未経験からエンジニアになった受講生の実績
「本当に未経験からなれるのか」は、実際になった人を見るのが一番早いです。いずれもAWS・Javaコースの卒業生ですが、「未経験から学び、作ったものを見せ、転職する」という道筋は職種が変わっても同じです。
事例①:完全未経験から半年でWebエンジニアへ|年収250万円→600万円
プログラミング完全未経験からJavaコースを受講し、受講開始から半年でWebエンジニアとして転職。フルリモート・残業ゼロの働き方になりました。特別な才能があったわけではなく、講義に毎週出席し、分からないことをその週のうちに質問で解消する、という当たり前のことを止めずに続けた結果です。
事例②:30代後半・未経験からクラウドインフラエンジニアへ
30代後半、AWS未経験からAWSコースを受講。キャリアチェンジ後の最初の職場で年収600万円に到達し、フルリモートで働いています。前職までの社会人経験は、エンジニアになってからもプロジェクトの進め方や顧客とのやり取りで強みになります。
事例③:SESから年収800万円へ
本業に副業を足して年収800万円に到達した事例です。入ったあとの伸び方の一例として参考になります。
→ スクールを使うかどうかで迷っている場合は、未経験向けプログラミングスクール比較11選で11社を受講料・給付金・対象職種で比べています。
よくある質問
未経験のIT転職で失敗する人の割合はどれくらいですか
その統計はありません。「未経験からIT転職した人のうち何%が失敗したか」を調べた公的な調査は存在しません。この記事で使った集計も、失敗の件数ではなく「求人票と実際が違う」という申出の件数です。割合を出している記事は、媒体のアンケートか推計だと思って読んでください。
求人票と実際が違ったら、どうすればいいですか
ハローワーク経由の求人であれば、ハローワークに申し出ることができます。令和6年度はそれが全国で3,297件ありました。民間の転職サービス経由なら、まずその事業者の担当者に伝えるのが先になります。いずれの場合も、求人票と、受け取った労働条件通知書を手元に残しておいてください。
IT業界は求人票と実際が違うことが多いのですか
この集計では情報通信業は72件で、全国計3,297件の2.2%です。医療・福祉(725件)やサービス業(470件)より大幅に少ない数字でした。ただしハローワーク経由の求人数そのものが産業で違うため、これだけでITが少ないとは言い切れません。
何をいちばん確かめればいいですか
賃金です。申出の内容で最も多く(929件・20.2%)、かつ求人票を読めば確かめられます。見るのは提示額そのものではなく内訳で、固定残業代が含まれているか、含まれるなら何時間分かを確認してください。次に多いのが就業時間(14.4%)、職種・仕事の内容(12.9%)です。
「失敗」と「後悔」は違いますか
この記事で扱ったのは条件の食い違いという、外から確かめられる事実です。未経験エンジニアの後悔のほうは、本人の受け止めを取り消せるものと取り消せないものに分けています。両者は別の問題なので、分けて考えたほうが打ち手が決まります。
まとめ|食い違っているのは、書いてあった項目
- 失敗を数えた公的な集計は1つだけ。ハローワークの求人票と実際の労働条件の相違に係る申出で、令和6年度は3,297件。8年前の8,507件から61%減っています
- 中身の上位3つは賃金20.2%・就業時間14.4%・職種12.9%で、合わせて47.5%。どれも求人票に書いてある項目で、適性やスキルの項目は出てきません
- 要因は「求人票の内容が実際と異なる」44.8%、「求人者の説明不足」28.3%。7割以上は出した側に理由があります
- ただし「求職者の誤解」も11.0%。10件に1件は、読み違えか、聞かずに決めた側の問題でした
- 情報通信業は72件で全体の2.2%。ITだけが特別という構造は、この集計には出ていません
本メディアはRaiseTech(PISTEC株式会社)が運営しています。
出典:厚生労働省「令和6年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」および同省の件数の推移(2026年11月1日取得)。内容別・要因別は、1件の申出に複数の内容が含まれる場合それぞれに計上されています。本記事の「全体に占める割合」は、公表件数を全国計3,297件で割ったものです。
この集計は公共職業安定所(ハローワーク)が扱った求人に限られます。民間の職業紹介事業者や求人サイトを通じた分は含まれません。また求職者が未経験か経験者かの区分はなく、全年代・全産業が対象です。「転職の失敗」そのものを数えた統計ではありません。
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