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「未経験で採用したが、何をどこまで任せればいいのか決まっていない」
「現場に任せきりで、育っているのか判断できません」
この記事は、そんな課題を持って「未経験エンジニア 育成」と検索した採用担当者・受け入れ側の責任者の方のために書きました。
結論から言うと、未経験の育成でうまくいかない原因のほとんどは、本人の能力ではなく「到達点が決まっていないこと」です。3か月後にどうなっていてほしいかが言語化されていないと、現場は手が空いたときに教えるしかなくなり、本人は自分が順調なのか分からないまま時間が過ぎます。
この記事では、育成計画が無いと何が起きるか、3・6・12か月の到達点の決め方、最初の3か月の設計、OJTを機能させる条件、進捗の測り方、うまくいかない典型パターンを解説します。
RaiseTech(レイズテック)は、受講者数2,500名超え!現役エンジニアが講師を務めるAIエンジニア育成のオンラインスクールです。未経験人材の育成と、企業さまへの紹介の両方を手がけてきた立場からお伝えします。
育成計画が無いと、何が起きるか
「現場でOJT」とだけ決めて受け入れると、だいたい同じ経過をたどります。順に見てください。

| 時期 | 現場で起きること | 本人の状態 |
|---|---|---|
| 最初の数週間 | 手が空いた人が、気づいたことを教える | 覚えることが多く、順調だと感じる |
| 1〜2か月 | 教える人によって言うことが違う | 何が正解か分からなくなる |
| 3か月前後 | 任せられる作業が増えない。「まだ早い」が続く | 自分が遅れているのか判断できない |
| 半年前後 | 現場は「育っていない」と感じ、本人は「成長していない」と感じる | 転職を考え始める |
2行目と4行目が分かれ目です。教える人によって言うことが違うのは、個人の問題ではなく到達点が共有されていないことの結果です。「どこまでできれば次に進めるか」が決まっていないと、各自が自分の基準で教えることになります。
4行目については、両者が同じ事実を別の言葉で言っているだけ、ということがよくあります。共通の物差しが無いので、どちらも感覚で判断するしかありません。育成計画の本体は、研修の中身ではなく、この物差しのほうです。
3・6・12か月の到達点を決める
最初に決めるのは、研修の内容ではなく到達点です。期間を3つに区切り、それぞれで「何ができていれば通過か」を1文で書いてください。

| 時期 | 到達点の例 | 見るもの |
|---|---|---|
| 3か月 | 決まった手順の作業を、指示があれば自分で終えられる | 作業の完了と、詰まったときに聞けているか |
| 6か月 | 小さな機能を、設計の相談をしながら最後まで実装できる | 見積もりのずれと、レビューの指摘の減り方 |
| 12か月 | 要件を聞いて、作るものを自分で分解できる | 分解の粒度と、判断の理由を説明できるか |
この表の「到達点の例」は、自社の仕事に合わせて必ず書き換えてください。大事なのは文言ではなく、3つの時点で区切り、それぞれを1文にすることです。1文にできない場合、その到達点はまだ曖昧なままです。
期間の区切り方にも理由があります。3か月は、受け入れの設計が合っていたかを判断する最初の地点です。ここで想定とずれていた場合、計画のほうを直します。本人の努力の問題にすると、その後も同じずれが続きます。
12か月を最後に置いているのは、「自分で分解できる」が独り立ちの実質的な境目だからです。手順どおりに作れることと、何を作るかを決められることの間には、大きな差があります。
なお、ここに書いた期間は設計の単位であって、標準ではありません。前職の経験、扱う技術、現場の体制で変わります。短くできる場合もあれば、もっとかかる場合もあります。
最初の3か月の設計
最初の3か月は、技術を教える期間ではなく「聞ける状態」を作る期間だと考えてください。ここが作れていないと、以降は何をやっても進みません。

| 用意するもの | 中身 | 無いとどうなるか |
|---|---|---|
| 質問していい相手と時間 | 誰に、いつ聞いてよいかを決める。「いつでもどうぞ」は機能しません | 遠慮して聞けず、詰まった時間が積み上がります |
| 最初に任せる作業の候補 | 影響範囲が小さく、完了が分かるものを数件 | 任せる作業を毎回探すことになり、手が止まります |
| 詰まったときの基準 | 「30分調べて進まなければ聞く」など、時間で区切る | 半日や1日を1人で溶かします |
| 週1回の振り返り | 15分でよい。できたこと・詰まったこと・次の1週間 | ずれに気づくのが3か月後になります |
3行目が、最も効果が大きく、最も導入が簡単な項目です。未経験者が最初に失う時間は、分からないことを1人で抱える時間です。「調べる力をつけてほしい」という意図で放置すると、調べ方が分からない段階では時間だけが過ぎます。時間で区切れば、本人も聞きやすくなります。
1行目について補足します。「いつでも聞いて」は、受け入れ側の善意ですが、実務では機能しません。相手が忙しそうに見えるたびに判断が止まるためです。曜日と時間を決めるか、担当を1人に決めるほうが実際には聞きやすくなります。
4行目の振り返りは、評価の場ではありません。計画と実態がずれていないかを早く見つけるための場です。15分で足ります。ここで「想定より進んでいない」と分かれば、任せる作業の難易度を調整できます。
OJTを機能させる条件
OJTは「現場に任せる」という意味ではありません。機能させるには条件があります。

| 条件 | 機能する状態 | 機能しない状態 |
|---|---|---|
| 担当者が決まっている | 1人に決まっていて、その人の業務量が調整されている | 手が空いた人が教える。業務量は調整されていない |
| 教える時間が業務に入っている | 工数として見込まれている | 自分の作業のあとの時間でやる |
| 到達点が共有されている | 何ができれば次かを、教える側も本人も知っている | 各自の基準で教える |
| 担当者が評価される | 育成の成果が、担当者の評価に入っている | やってもやらなくても変わらない |
2行目は見落とされがちですが、実際にはここで決まります。教える時間が工数に入っていないと、担当者にとって育成は「自分の仕事を遅らせるもの」になります。善意に頼る設計は続きません。
4行目も同じ構造です。育成がうまくいっても担当者の評価が変わらないなら、優先順位は下がります。評価に入れるのが難しい場合でも、少なくとも「担当している」ことを周囲が認識している状態は必要です。
→ 受け入れ直後の設計はエンジニアのポテンシャル採用とは|評価基準と進め方でも扱っています(こちらは採用までが中心です)。
進捗をどう測るか
「成長している気がする」では判断できません。かといって、細かい指標を並べると運用が続きません。見るものを絞ってください。

| 見るもの | 何が分かるか | 頻度 |
|---|---|---|
| レビューの指摘の種類 | 同じ指摘が繰り返されているか。減っているかより「種類が変わったか」を見ます | 毎回 |
| 見積もりとのずれ | 作業の全体像が見えてきているか。ずれが縮むのは理解が進んだ証拠です | 作業ごと |
| 詰まってから聞くまでの時間 | 聞ける状態になっているか。長いままなら環境の問題です | 週1回の振り返りで |
| 説明できる範囲 | 自分が書いたものの理由を説明できるか。写して動かしただけかが分かります | 月1回 |
1行目を補足します。指摘の数だけを見ると、難しい作業に移った時点で増えるため、後退したように見えます。見るべきは種類です。書き方の指摘から設計の指摘に変わっていれば、前に進んでいます。
4行目は、最も簡単で、最も実態が分かる方法です。「なぜこの作り方にしたのか」を聞くだけです。答えられない部分が、まだ身についていない部分です。責める場にしないことだけ注意してください。
うまくいかない典型パターン
受け入れ側の設計で起きやすいものを挙げます。いずれも本人の能力とは別の話です。

| パターン | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 最初から本番の作業を任せる | 影響が大きく、周囲が確認に時間を取られる。本人も萎縮します | 影響範囲の小さい作業から。完了が分かるものを選ぶ |
| 研修期間だけ手厚く、あとは放置 | 研修と実務が別物なので、実務に入った時点で止まります | 研修より、実務に入ってからの3か月に資源を置く |
| 到達点を伝えていない | 本人が自分の位置を把握できず、不安だけが残ります | 3か月後の到達点を、入社時に本人へ共有する |
| できないことの指摘だけを伝える | 何を直せばよいかが分からず、同じ指摘が続きます | 指摘とあわせて、次に何をするかを1つ決める |
3行目は、すぐに直せて効果が大きい項目です。到達点は、受け入れ側だけが持っていても意味がありません。本人に伝えておくと、自分で進捗を判断できるようになり、振り返りの会話も具体的になります。
2行目についても触れておきます。研修を手厚くすること自体は悪くありませんが、離脱が起きやすいのは研修中ではなく、実務に入って数か月経ったころです。資源を置く場所を間違えないでください。
よくある質問
未経験エンジニアが戦力になるまで、どれくらいかかりますか?
前職の経験、扱う技術、受け入れ側の体制で大きく変わるため、標準的な期間は示せません。設計の単位としては3か月・6か月・12か月で区切り、それぞれの到達点を1文で決める方法が扱いやすくなります。3か月の時点で想定とずれていたら、本人ではなく計画のほうを調整してください。
OJTだけで育成できますか?
条件が揃えば可能です。担当者が1人に決まっていること、教える時間が工数に入っていること、到達点が教える側と本人の双方に共有されていること、育成が担当者の評価に反映されること。この4つが揃わないOJTは、実質的に「現場に任せきり」と同じ結果になります。
育成担当者には、どれくらいの工数を見込むべきですか?
具体的な割合は現場の状況によりますが、重要なのは工数として明示的に見込むことです。見込まれていないと、担当者にとって育成は自分の作業を遅らせるものになり、優先順位が下がります。あわせて、担当者の評価に育成の成果を含める設計にしてください。
進捗が思わしくないとき、何から見直せばよいですか?
最初に見るのは「詰まってから聞くまでの時間」です。ここが長いままなら、技術以前に聞ける状態が作れていません。質問してよい相手と時間を決める、30分など時間で区切って聞く基準を作る、の2つで改善することが多くあります。そのうえで、任せている作業の難易度を見直してください。
未経験エンジニアの採用をお考えなら
ここまで書いてきたとおり、未経験の育成でうまくいくかどうかは、受け入れ側の設計で大きく変わります。ただし、設計が整っていても、入ってくる人が学習の過程を自分で説明できる状態かで、立ち上がりの速さは変わります。
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まとめ|育成計画の本体は、研修ではなく「物差し」
この記事のポイントを3つにまとめます。
- うまくいかない原因の多くは、到達点が決まっていないこと。決まっていないと、教える人ごとに基準が変わり、本人も自分の位置を把握できません。研修の中身より先に、ここを決めてください。
- 3か月・6か月・12か月で区切り、それぞれを1文で書く。1文にできないなら、その到達点はまだ曖昧です。そして到達点は、本人にも伝えてください。
- OJTは「現場に任せる」ことではない。担当者が決まっている・教える時間が工数に入っている・到達点が共有されている・担当者が評価される。この4つが条件です。
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