「未経験で採った人が、1年たたずに辞めてしまった」
「研修も組んだのに、何が足りなかったのか分からない」
この記事は、そんな課題を持って「エンジニア 早期離職 対策」と検索した採用担当者の方のために書きました。
結論から言うと、早期離職の多くは入社後ではなく、求人票と面談の段階で決まっています。厚生労働省の調査で転職者が前職を辞めた理由を見ると、上位に来るのは給料だけではなく、労働条件・人間関係・会社の将来です。どれも入社前に確認できたはずの項目です。
この記事では、情報通信業の離職率の実数、辞めた理由の内訳、未経験採用で早期離職が起きる3つの構造、入社前に潰す方法、入社後1年の打ち手を解説します。数値はすべて公表資料から取り、取得日を明記します。
情報通信業の離職率は、産業計より低い
まず前提を揃えます。「IT業界は離職が多い」という印象がありますが、統計上はそうではありません。

| 入職率 | 離職率 | 入職超過率 | |
|---|---|---|---|
| 情報通信業 | 13.6% | 10.4% | +3.2pt |
| 産業計 | 14.7% | 13.7% | +1.0pt |
| 情報通信業(一般労働者) | 13.1% | 10.0% | +3.1pt |
| 情報通信業(パートタイム) | 27.4% | 21.9% | +5.5pt |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」表4-2(2026年10月16日取得)。常用労働者5人以上の事業所が対象です。
情報通信業の離職率10.4%は、産業計の13.7%より3.3ポイント低い水準です。入職者は253.8千人、離職者は194.0千人で、1年で約6万人の純増になっています。入職超過率+3.2ポイントは産業計(+1.0ポイント)の3倍です。
つまり、業界全体として人が出ていっているわけではありません。自社で早期離職が起きているなら、それは業界の構造ではなく、自社の採用と受け入れの問題として見るほうが打ち手が見つかります。
POINT
情報通信業の離職率は産業計より低い。業界のせいにすると打ち手が消える。
辞めた理由の上位は、給料だけではない
同じ調査で、転職した人が前職を辞めた理由を聞いています。「その他の個人的理由」と「定年・契約期間の満了」を除いた上位を並べます。

| 理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 給料等収入が少なかった | 9.9% | 8.6% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 8.9% | 11.5% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.5% | 12.9% |
| 会社の将来が不安だった | 6.9% | 4.3% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 5.2% | 3.9% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 5.2% | 4.6% |
出典:同調査 表5(2026年10月16日取得)。「その他の個人的理由」(男16.8%・女23.8%)、「定年・契約期間の満了」(男16.1%・女9.8%)、「その他の理由(出向等を含む)」は除いています。
給料が理由の1つであることは確かですが、単独で突出してはいません。男性では給料9.9%に対し、人間関係8.9%と労働条件8.5%がほぼ並びます。女性では労働条件12.9%・人間関係11.5%が給料8.6%を上回ります。
年齢で見ると、若い層ほど労働条件の比重が上がります。
| 年齢階級(男性) | 給料 | 労働条件 | 人間関係 | 会社の将来 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 13.8% | 12.4% | 10.3% | 2.4% |
| 25〜29歳 | 13.1% | 10.5% | 10.7% | 11.0% |
| 30〜34歳 | 13.4% | 13.0% | 5.9% | 10.0% |
25歳を超えると「会社の将来が不安だった」が2.4%→11.0%へ跳ね上がります。20代前半は目の前の条件を見ていますが、25歳以降はこの会社で続けた先を見ています。未経験で中途採用する層はここに当たるため、入社後の見通しを示せるかどうかが定着に直結します。
未経験採用で早期離職が起きる3つの構造
上の理由を、未経験エンジニアの採用に当てはめると、起きやすいのは次の3つです。

| # | 構造 | 何が起きるか | 対応する離職理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 業務内容のずれ | 開発で採用したが、実際は運用・監視・テストが中心だった。本人は「開発をやるために入った」と思っている | 仕事の内容に興味を持てなかった/能力を生かせなかった |
| 2 | 就業場所・働き方のずれ | 客先常駐が入社後に判明する。勤務地や通勤時間が想定と違う | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
| 3 | 評価基準が示されていない | 何ができたら評価されるのかが分からないまま1年が過ぎる。昇給の見通しも立たない | 給料等収入が少なかった/会社の将来が不安だった |
3つとも、入社後に発生した問題ではありません。入社前に伝えていなかった、または伝え方が足りなかったことが、入社後に表面化しただけです。
未経験者は、経験者と違って「この求人票だと実際はこういう仕事だろう」という読み替えができません。書いていないことは、書いていないまま受け取られます。
入社前に潰す|求人票と面談で決まる
上の3つは、求人票の書き方でほぼ潰せます。しかも、そのうち2つは法令で明示が義務づけられている項目です。
| 構造 | 対応する明示事項 | 条文 |
|---|---|---|
| 1 業務内容のずれ | 従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む) | 職業安定法施行規則 第4条の2第3項第1号 |
| 2 就業場所のずれ | 就業の場所(変更の範囲を含む) | 同 第3号 |
| 3 評価基準 | 明示義務はない。自社で決めて書くしかない | — |
1と2の「変更の範囲」は、2024年4月1日から明示事項に加わりました。客先常駐がありうるなら、ここで書くことになります。書き方はエンジニア求人票の書き方で、明示が要る12項目とあわせて解説しています。
3については、面談で次の3点を伝えてください。いずれも、未経験者が自分では想像できない部分です。
- 入社後3か月・6か月・12か月に何をするか(研修の有無ではなく、中身と期間)
- 1年目は何で評価するか。成果ではなく、何を見るか(例:詰まったときにどこまで切り分けてから聞けるか)
- 最初の配属先。決まっていないなら「選考過程で決定する」と伝える
候補者の自走力を選考でどう見るかは未経験エンジニアの見極め方にまとめています。選考で見た材料と、入社後の評価基準をそろえておくと、入ってからのずれが小さくなります。
入社後1年でやること
入社前の明示が済んでいれば、入社後にやることは多くありません。3か月・6か月・12か月で区切ります。

| 時期 | やること | 潰す離職理由 |
|---|---|---|
| 〜3か月 | 求人票に書いた業務内容と、実際の担当が合っているかを本人と確認する。ずれているなら、いつ合う見込みかを示す | 仕事の内容に興味を持てなかった |
| 〜6か月 | 評価の予告をする。1年目の評価で何を見るかを、面談で言語化して伝える。この時点で足りない点があれば、6か月先までの埋め方も一緒に決める | 能力を生かせなかった/会社の将来が不安だった |
| 〜12か月 | 次の1年に何を任せるかを提示する。昇給の有無だけでなく、担当する範囲がどう広がるかを示す | 給料等収入が少なかった/会社の将来が不安だった |
6か月の「評価の予告」がいちばん効きます。25〜29歳で「会社の将来が不安だった」が11.0%に跳ねるのは、先が見えないからです。評価の結果を伝えるのは1年後でも、何を見るかは先に伝えられます。
育成の進め方そのものは未経験エンジニアの育成計画で、3・6・12か月の組み方を解説しています。
離職が出たときに見る3つの数字
起きてしまった離職は、次の採用の材料として使えます。感想ではなく数字で残してください。
| # | 見る数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| 1 | 入社から離職までの月数 | 3か月以内なら業務内容か就業場所のずれ。6〜12か月なら評価と見通しの問題であることが多い |
| 2 | 求人票に書いていなかった項目 | 離職者が挙げた理由を、自社の求人票と突き合わせる。書いていなかった項目が、そのまま次の求人票の修正点になる |
| 3 | 同じ経路で採用した人の継続率 | 媒体・人材紹介・リファラルなど、経路ごとに分けて見る。経路によって候補者が持っている前提が違う |
2がいちばん手を付けやすいところです。退職面談で出た理由を、求人票の12項目と1つずつ照合するだけで、次に直す場所が決まります。採用手法ごとの費用の見方はエンジニアの採用コストにまとめています。
POINT
離職理由を求人票の12項目と照合する。書いていなかった項目が、次に直す場所。
よくある質問
未経験エンジニアの早期離職率はどのくらいですか
未経験に限った公的な統計はありません。参考になるのは情報通信業全体の離職率で、令和7年は10.4%でした。産業計の13.7%より3.3ポイント低い水準です。入職者253.8千人に対し離職者194.0千人で、1年で約6万人の純増になっています。自社の数字がこれを大きく上回るなら、業界要因ではなく自社の採用と受け入れを見てください。
早期離職を防ぐために、給料を上げるべきですか
給料だけでは説明がつきません。転職者が前職を辞めた理由は、男性で給料9.9%・人間関係8.9%・労働条件8.5%とほぼ並び、女性では労働条件12.9%・人間関係11.5%が給料8.6%を上回ります。先に手を付けるべきは、求人票に書いていなかった条件のずれです。
入社何か月目の離職が多いですか
公表統計では月数別の内訳が出ていないため、自社で記録してください。見方の目安として、3か月以内なら業務内容か就業場所のずれ、6〜12か月なら評価と見通しの問題であることが多くなります。離職者が挙げた理由を自社の求人票と1項目ずつ照合すると、次に直す場所が決まります。
面談で何を伝えれば定着しますか
未経験者が自分では想像できない3点です。入社後3か月・6か月・12か月に何をするか、1年目は何で評価するか、最初の配属先です。とくに25歳を超えると「会社の将来が不安だった」を理由に挙げる割合が2.4%から11.0%に上がります。先の見通しを示せるかどうかが効きます。
未経験エンジニアの採用をお考えなら
入社前のずれを潰すには、候補者が何をどこまで学んできたかが見えている必要があります。履歴書と数十分の面接だけでは、そこまで分かりません。
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採用した企業の事例
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RaiseTechの受講生を複数名採用した決め手は、「高難度のカリキュラムをやり抜いた自走力・学習力」と、学習背景が可視化されていて採用判断がしやすかったことです。採用した人材は半年でグループリーダーに昇進し、教育コストも大きく下がったとのことでした。
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まとめ|早期離職は、入社前にほぼ決まっている
この記事のポイントを3つにまとめます。
- 情報通信業の離職率10.4%は、産業計13.7%より低い。業界の構造ではなく、自社の採用と受け入れの問題として見たほうが打ち手が見つかります
- 辞めた理由は給料だけではない。男性は給料9.9%・人間関係8.9%・労働条件8.5%がほぼ並び、女性は労働条件12.9%・人間関係11.5%が給料を上回ります。25歳を超えると「会社の将来が不安だった」が2.4%→11.0%に跳ねます
- ずれの3つのうち2つは、求人票の明示事項でそのまま潰せる。業務内容の変更の範囲と、就業場所の変更の範囲です。残る1つ(評価基準)は明示義務がないので、自社で決めて面談で伝えるしかありません
入社後にやることは、3か月で業務内容の照合、6か月で評価の予告、12か月で次の1年の提示です。とくに6か月の「評価の予告」が効きます。評価の結果を伝えるのは1年後でも、何を見るかは先に伝えられます。求人票の書き方はエンジニア求人票の書き方にまとめています。
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