「エンジニアの採用要件を決めてほしいと言われたが、何を基準に書けばいいのか分からない」
「現場が出してきた要件をそのまま出したら、応募が0だった」
この記事は、そんな課題を持って「エンジニア 採用要件 決め方」と検索した採用担当者の方のために書きました。
結論から言うと、要件は現場の希望から積み上げるのではなく、求人票に書く義務がある項目から逆算すると決まります。職業安定法施行規則が明示を義務づけている項目は、そのまま「決めておかなければ求人が出せないこと」のリストになっているからです。
この記事では、法令から逆算した要件の骨組み、MUSTとWANTの切り分け方、年齢で絞れる例外、絞りすぎたときに起きること、年収レンジの決め方を順に整理します。
要件は「決めないと求人が出せない項目」から逆算する
現場に「どんな人がほしいですか」と聞くと、だいたい要望が10個以上出てきます。それを全部書いた求人票は、応募が来ません。
先に決めるべきは、法令が「書け」と言っている項目です。職業安定法施行規則第4条の2第3項が、求人票に明示しなければならない事項を列挙しています。これは裏返すと「決まっていなければ募集を開始できないこと」です。

| 明示が要る事項 | 条文 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む) | 第1号 | 入社直後に担当する工程と、将来担当しうる範囲。ここが要件の中心 |
| 労働契約の期間 | 第2号 | 期間の定めの有無。年齢で絞るなら「定めなし」が前提(後述) |
| 試みの使用期間 | 第2号の2 | 長さと、その間の条件が本採用後と違うか |
| 就業の場所(変更の範囲を含む) | 第3号 | 客先常駐の可能性、転居を伴う異動の有無 |
| 始業・終業、所定外労働の有無、休憩、休日 | 第4号 | リモートの可否もここに紐づく |
| 賃金の額 | 第5号 | レンジを決めないと出せない。最後の章で扱う |
| 派遣労働者として雇用する旨 | 第8号 | 該当する場合は必須 |
太字の3つが、要件の骨組みになります。業務内容・就業場所・賃金。この3つが決まっていないのに「Reactの経験3年以上」のようなスキル要件から議論を始めると、話がまとまりません。
項目ごとの書き方はエンジニア求人票の書き方で、条文に沿って整理しています。
MUSTとWANTの切り分け方
骨組みが決まったら、スキル要件を分けます。分ける基準は「入社初日からできていないと業務が回らないか」の一点です。

| 判定 | 例 | |
|---|---|---|
| MUST | 入社初日から必要。無いと最初の1か月が成立しない | その現場の主言語が読めること/顧客と直接やり取りする役割なら、その経験 |
| WANT | 3か月あれば身につく。またはレビューで補える | 特定のフレームワーク/社内ツールの使い方/ドメイン知識 |
| 要件から外す | 入社後に会社が用意するもの | 資格/特定のクラウドの認定/英語(使う場面が無いなら) |
現場から出た要望を仕分ける3つの質問
- 「それが無いと、最初の1か月で何が止まりますか」
答えが出てこなければWANTです。止まる具体例が出るものだけがMUSTになります - 「いま在籍している人は、入社時点でそれを持っていましたか」
持っていなかったなら、新しい人にも要りません。この質問がいちばん効きます - 「それを教えられる人は社内にいますか」
いるならWANTに落とせます。いないならMUSTのままにするか、採用以外の手段を考えます
MUSTは3つまでに収めてください。4つ以上並ぶと、該当者が市場からほぼ消えます。求人倍率と「決まらなさ」の実態はエンジニア採用市場の動向にまとめました。
年齢で絞れるのは、法令が認めた場合だけ
要件に「35歳まで」と書けるかどうかは、会社の方針ではなく法令で決まります。
労働施策総合推進法第9条により、募集・採用では年齢にかかわりない均等な機会を与えることが原則です。例外は同法施行規則第1条の3第1項の4類型だけです。

| 例外 | 条文 | エンジニア採用で使えるか |
|---|---|---|
| 定年を下回ることを条件とする | 第1号 | 定年を定めている場合。期間の定めのない労働契約に限る |
| 法令で就業が禁止・制限されている業務 | 第2号 | 深夜業など。通常あたらない |
| 長期勤続によるキャリア形成 | 第3号イ | これを使う |
| 技能・知識の継承、芸術・芸能、高年齢者の雇用促進 | 第3号ロ〜ニ | 特定の条件下のみ |
第3号イを使うときは、3つの条件が付きます。
- 期間の定めのない労働契約であること
- 職業に従事した経験を求人の条件としないこと
- 新卒者、またはそれと同等の処遇で募集すること
2つ目が要件設計に直接効きます。「35歳まで、実務経験3年以上」はこの例外では通せません。年齢で絞るなら経験要件を外す、経験で絞るなら年齢要件を外すのどちらかです。
若手を狙う場合に何が起きているかは若手エンジニア採用が難しい理由で扱っています。
絞りすぎたときに起きること
要件を厳しくすると応募は減りますが、減り方が均一ではありません。ここを知らずに絞ると、想定と違う方向に母集団が動きます。
| やりがちな絞り方 | 実際に起きること |
|---|---|
| MUSTを5つ以上並べる | 該当者がほぼいなくなる。応募が0になるのではなく、要件を読まない人だけが応募してくる。選考の工数は減らない |
| 「実務経験◯年以上」で切る | 年数は実力と相関が弱い。年数だけ満たした人が通り、短期間で伸びた人が落ちる |
| 学歴・資格を必須にする | 母集団が狭まるわりに、業務での差が説明できない |
| 業務内容を広く書く(「IT業務全般」) | 絞ったつもりが逆効果。何をするか分からない求人は見送られる |
| 就業場所の変更の範囲を曖昧にする | 応募後・内定後の辞退が増える。入社後に判明するといちばん高くつく |
上から2つ目は要件定義の核心です。年数ではなく「何ができるか」で書くと、同じ母集団から通る人が変わります。経験以外で判断する方法は未経験エンジニアの見極め方と未経験エンジニアの面接質問24選にまとめています。
年収レンジの決め方
賃金は明示が義務の項目なので、レンジを決めないと求人が出せません。決め方の手順は次の4つです。

| 順番 | やること | 外しやすいところ |
|---|---|---|
| 1 | 社内の等級に当てはめる。同じ業務をしている在籍者の等級を先に決める | ここを飛ばすと、採用した人のほうが既存社員より高くなり、後で揉める |
| 2 | 市場の水準と照らす | 媒体のアンケートと公的統計は母集団が違う。どちらを見ているかを明示して比べる |
| 3 | MUSTの数に応じて上げる。要件を厳しくするなら、その分レンジも上げる | ここが抜けると「要件は厳しいが給与は普通」になり、いちばん決まらない |
| 4 | 上限を出す根拠を用意する | 「応相談」だけでは応募前に見送られる。上限に届く条件を言語化する |
3番が抜けている求人がとても多いです。現場の希望を全部MUSTにしたまま、給与は既存のレンジのまま出す。これが「要件は満たさないが応募はある」「満たす人は来ない」という状態の主因です。
採用にかかる費用の内訳はエンジニア採用コストの相場にまとめています。レンジを上げる判断は、採用単価と合わせて見てください。
決めた要件を見直すタイミング
一度決めた要件は、次の3つのどれかが起きたら見直します。
- 4週間で書類通過が0件。要件か、出しているチャネルのどちらかが合っていません
- 面接まで進むが全員が同じ理由で落ちる。MUSTに入れるべきものがWANTに入っています
- 内定辞退が2件続いた。要件ではなく、レンジか就業条件の問題です
いずれも要件を緩めるかどうかの前に、どこで落ちているかを先に特定してください。要件を緩めても、原因がチャネルやレンジなら何も変わりません。
未経験まで広げる判断をする場合は未経験エンジニア採用ガイド、入社後の立ち上げ方は未経験エンジニアの育成計画にまとめています。
未経験エンジニアの採用をお考えなら
要件を絞った結果「経験は問わない」に行き着いたとき、次に必要になるのが経験以外で判断する材料です。学習の過程が見えない候補者を、履歴書と数十分の面接だけで判断するのは無理があります。
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採用した企業の事例
クラウドインテグレーションを手がけるKDDIアイレット株式会社様(旧アイレット株式会社)では、業界経験者の採用が難しく、未経験採用を始めたものの内製カリキュラムが業界の変化に追随できないという課題がありました。
RaiseTechの受講生を複数名採用した決め手は、「高難度のカリキュラムをやり抜いた自走力・学習力」と、学習背景が可視化されていて採用判断がしやすかったことです。採用した人材は半年でグループリーダーに昇進し、教育コストも大きく下がったとのことでした。
紹介できるのは、AIエンジニア育成コース(旧Javaコース)とAWSコースの受講生です。Java・Spring Bootによるバックエンド、React・TypeScriptによるフロントエンド、AWSでのインフラ構築、CI/CDやテストまでを、課題に取り組みながら学んでいます。
よくある質問
現場が出してきた要件を減らすと、現場が納得しません
「いま在籍している人は、入社時点でそれを持っていましたか」を聞いてみてください。持っていなかった項目は、現場も実際には必須と思っていないことが多いです。この質問は要件を減らす交渉ではなく、事実の確認なので揉めにくくなります。
MUSTは本当に3つまでですか
法令で決まっているわけではありません。ただしMUSTが増えるほど該当者は掛け算で減ります。4つ目を足すときは、「これを足すと母集団が何分の1になるか」を見積もってから決めてください。
「実務経験3年以上」は書いてはいけませんか
書けます。ただし年齢で絞る例外(第3号イ)とは併用できません。また年数は実力との相関が弱いので、年数で切るならその年数で何ができているはずかを併記するほうが機能します。
年収レンジは幅をどれくらい取るべきですか
一律の正解はありません。幅を広く取るなら、上限に届く条件を言語化してください。根拠のない広いレンジは、応募者から「下限で出されるのだろう」と読まれます。
まとめ|要件は希望から積み上げず、義務から逆算する
- 先に決めるのは、求人票に明示が義務の項目(職業安定法施行規則第4条の2第3項)。とくに業務内容・就業場所・賃金の3つが骨組みです
- MUSTは「入社初日から必要か」だけで判定し、3つまでに収める
- 仕分けにいちばん効く質問は「いま在籍している人は、入社時点でそれを持っていましたか」
- 年齢で絞るなら経験要件を外す。第3号イは職業経験を条件にできません
- 要件を厳しくしたら、レンジも上げる。ここが抜けるといちばん決まりません
- 見直しは「4週間で書類通過0」「全員が同じ理由で落ちる」「内定辞退2件連続」のどれかが起きたとき
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出典:職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)第4条の2第3項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条、同法施行規則 第1条の3第1項(e-Gov法令検索・2026年10月21日確認)。MUST/WANTの切り分け方、年収レンジの手順、見直しのタイミングは法令で定められたものではなく、求人票の記載義務から逆算して本記事で整理したものです。
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