「エンジニアは採れない」と言われ続けています。実感としてはそのとおりでも、どのくらい採れないのかを数字で説明できるかは別の話です。
この記事は、そんな課題を持って「エンジニア採用 市場 動向」と検索した採用担当者の方のために書きました。
結論から言うと、公的な統計で見るかぎり、エンジニアの求人倍率は高くありません。情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.33倍で、専門的・技術的職業の平均1.73倍を下回ります。しかも前年の同じ月より0.09ポイント下がっています。
では何が難しいのか。倍率ではなく「決まらなさ」です。この記事では、職業別の順位・前年との比較・決まらなさの数字を、厚生労働省の一般職業紹介状況から確かめます。
結論|エンジニアの求人倍率は、思われているほど高くない
厚生労働省は毎月、ハローワークの職業紹介の状況を「一般職業紹介状況」として公表しています。その職業別表に、情報処理・通信技術者の欄があります。

| 職業 | 新規求人倍率 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|
| 建築・土木・測量技術者 | 9.01 | 5.71 |
| 医療技術者 | 5.01 | 3.21 |
| 保健師,助産師,看護師 | 3.12 | 2.00 |
| 専門的・技術的職業従事者(平均) | 3.18 | 1.73 |
| 情報処理・通信技術者 | 2.88 | 1.33 |
| 職業計(すべての職業) | 1.98 | 1.06 |
情報処理・通信技術者の1.33倍は、専門的・技術的職業の平均を下回ります。建築・土木の5.71倍とは4倍以上の開きがあります。
「エンジニアの奪い合い」という言葉から想像する数字とは違うはずです。少なくともハローワークの職業紹介に限れば、エンジニアは最も採りにくい職業ではありません。
なぜ実感と合わないのかは、このあと順に見ます。先に結論だけ言うと、①この数字はハローワーク経由だけ ②難しいのは倍率ではなく決まらなさの2つです。
前年と比べる|求人が減り、求職者が増えている
同じ統計には、前年の同じ月と比べた増減も載っています。ここが今年の変化です。

| 項目 | 前年同月比 | 向き |
|---|---|---|
| 新規求人 | −3.4% | 企業からの募集は減った |
| 有効求人 | −0.8% | 同上 |
| 新規求職 | +11.1% | 仕事を探す人は増えた |
| 有効求職 | +6.4% | 同上 |
| 新規求人倍率 | −0.43ポイント | 3.31 → 2.88 |
| 有効求人倍率 | −0.09ポイント | 1.42 → 1.33 |
求人が減り、求職者が1割以上増えています。採用側から見れば、母集団は去年より集めやすくなっているはずの状況です。
これは「エンジニア採用が年々難しくなっている」という前提と逆を向いています。難しさの中身が、母集団の確保から別のところへ移っていると読むほうが実態に合います。
採用が難しいと感じる理由の分解はエンジニア採用が難しい5つの理由で扱っています。
本当の問題は倍率ではなく「決まらなさ」
同じ表には、求人・求職の数だけでなく紹介件数と就職件数も載っています。ここが今回いちばん重い数字です。

| 項目 | 件数(2026年8月) |
|---|---|
| 有効求人 | 51,958 |
| 有効求職 | 39,174 |
| 紹介件数 | 5,593 |
| 就職件数 | 361 |
紹介された5,593件のうち、就職に至ったのは361件です。割合にすると約6.5%(本記事での計算。公表値ではありません)。紹介が15件あって1件決まるという水準です。
求人が39,174人の求職者に対して51,958件ある一方で、1か月に決まるのは361件。求人と求職の両方がある状態で、噛み合っていません。
なお前年と比べると、紹介件数は+10.8%、就職件数は+2.0%で、どちらも増えてはいます。紹介の伸びに就職が追いついていない、という形です。
噛み合わない理由として説明できること
統計はここまでしか言いません。以下は、求人票と選考の設計から説明できる範囲です。
- 求人の要件と求職者の経験が合っていない。「実務3年以上」と書いた求人に、未経験・独学の求職者が応募する構図が続く
- 求人票の記載が足りず、応募前の辞退が起きている。就業場所の変更の範囲や業務内容が曖昧なまま出ている求人は、見送られやすい
- 選考の基準が社内でそろっていない。面接官によって評価が割れると、決めきれずに流れる
求人票の整え方はエンジニア求人票の書き方、選考の基準づくりは未経験エンジニアの見極め方と未経験エンジニアの面接質問24選にまとめています。
新規2.88倍と有効1.33倍の差は何を示すか
同じ月の数字なのに、新規求人倍率は2.88倍、有効求人倍率は1.33倍と倍以上の開きがあります。この差にも意味があります。
2つの倍率は分母と分子が違います。
- 新規求人倍率=その月に新しく出た求人 ÷ その月に新しく登録した求職者
- 有効求人倍率=その時点で残っている求人 ÷ その時点で残っている求職者
新規のほうが高いということは、毎月の流入では求人が求職者を大きく上回っているのに、積み上がった状態では差が縮んでいるということです。残っている側に求職者が多く溜まっている形になります。
月あたりの流入で割ると、だいたいの滞留期間が出せます(本記事での計算です)。
| 残っている数 | その月の流入 | 滞留のめやす | |
|---|---|---|---|
| 求人 | 51,958 | 16,257 | 約3.2か月分 |
| 求職者 | 39,174 | 5,648 | 約6.9か月分 |
求職者のほうが、求人の倍以上の期間ハローワークに残っています。決まらないまま登録が続いている人が相当数いる、という読み方になります。
採用側にとっては、「応募が来ない」のではなく「応募が来ても合わない」状態が長く続いていることを示す数字です。要件を変えずに母集団だけを増やしても、ここは動きません。
なお、この滞留期間はあくまで割り算の目安です。実際に1人がどれだけ求職を続けたかを追跡した数字ではありません。
この数字を読むときの3つの注意
上の数字をそのまま「エンジニア採用市場の全体像」と読むと、判断を誤ります。
1. ハローワーク経由だけの数字
一般職業紹介状況は、ハローワークが扱った求人と求職だけを集計しています。エンジニア採用の主戦場である人材紹介・ダイレクトリクルーティング・求人媒体の分は一切入っていません。
つまり「1.33倍だから採りやすい」とは言えません。言えるのは、ハローワークという1つのチャネルの中での相対的な位置だけです。チャネルごとの性質はエンジニア採用手法7つを比較で扱っています。
2. 紹介件数・就職件数は「その月の動き」、求人・求職は「残っている数」
有効求人・有効求職はその時点で有効なものの数で、紹介件数・就職件数はその月に起きた件数です。性質が違うので、就職件数 ÷ 有効求人を「決定率」として読むことはできません。
本記事で割合を出したのは紹介件数に対する就職件数だけです(どちらも月次の件数なので比べられます)。
3. 「情報処理・通信技術者」は職業分類であって職種名ではない
この区分には、システムエンジニア・プログラマ・ネットワーク技術者などがまとめて入っています。自社が募集している職種の倍率ではありません。職種ごとの数字が要る場合は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で個別の職業を見てください。
採用計画にどう使うか
この統計は毎月更新されます。単月の数字で一喜一憂するものではなく、次の3つに使うのが現実的です。
| 使い方 | 見る数字 | 判断 |
|---|---|---|
| 母集団が集まらない理由の切り分け | 新規求職の前年同月比 | 市場全体で求職者が増えているのに自社だけ集まらないなら、原因は市場ではなく求人票かチャネル |
| 経営への説明 | 有効求人倍率の推移 | 「市場が厳しいから採れない」を使う前に、倍率が下がっていることを確認する。前提が違うと打ち手もずれる |
| 未経験採用に踏み切るかの判断 | 就職件数と紹介件数の差 | 経験者の要件のままでは噛み合わないなら、要件を下げるより入口を変えるほうが早いことがある |

採用にかかる費用の内訳はエンジニア採用コストの相場、未経験採用の全体像は未経験エンジニア採用ガイドにまとめています。
未経験エンジニアの採用をお考えなら
市場の数字は、求人を出す前の見通しを立てるためのものです。実際に困るのは、応募が来てから決まるまでの部分です。未経験の候補者は学習の過程が見えないため、履歴書と数十分の面接だけでは判断材料が足りません。
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採用した企業の事例
クラウドインテグレーションを手がけるKDDIアイレット株式会社様(旧アイレット株式会社)では、業界経験者の採用が難しく、未経験採用を始めたものの内製カリキュラムが業界の変化に追随できないという課題がありました。
RaiseTechの受講生を複数名採用した決め手は、「高難度のカリキュラムをやり抜いた自走力・学習力」と、学習背景が可視化されていて採用判断がしやすかったことです。採用した人材は半年でグループリーダーに昇進し、教育コストも大きく下がったとのことでした。
紹介できるのは、AIエンジニア育成コース(旧Javaコース)とAWSコースの受講生です。Java・Spring Bootによるバックエンド、React・TypeScriptによるフロントエンド、AWSでのインフラ構築、CI/CDやテストまでを、課題に取り組みながら学んでいます。
よくある質問
「IT人材が2030年に79万人不足する」という数字は使えますか
経済産業省が2019年に公表した推計で、複数のシナリオのうちの1つです。公表から年数が経っており、前提になっている生産性の伸びや人口推計も当時のものです。採用計画の根拠に単独で使うのは勧めません。毎月更新される求人倍率のほうが、いまの市場を映します。
有効求人倍率が下がっているなら、採用はしやすくなりますか
母集団を集める部分は、去年より条件がよくなっている可能性があります。ただし決まる件数は増えていません(紹介+10.8%に対して就職+2.0%)。集めるところと決めるところを分けて見てください。
自社の職種の求人倍率はどこで分かりますか
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で、職業ごとの有効求人倍率が公表されています。ただしハローワーク経由の数字である点は同じです。
この記事の数字はいつのものですか
2026年8月分です(2026年10月21日取得)。一般職業紹介状況は毎月公表されるので、本記事は翌月分の公表に合わせて更新します。
まとめ|市場のせいにする前に、倍率を見る
- 情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.33倍。専門的・技術的職業の平均1.73倍を下回り、建築・土木の5.71倍とは4倍以上の開きがあります
- 前年より求人が減り、求職者が1割以上増えています。倍率も下がりました(−0.09ポイント)
- 難しいのは倍率ではなく決まらなさ。紹介5,593件に対して就職361件で、15件紹介して1件決まる水準です
- これはハローワーク経由だけの数字です。人材紹介・ダイレクトリクルーティング・求人媒体の分は入っていません
- 市場全体で求職者が増えているのに自社だけ集まらないなら、原因は市場ではなく求人票かチャネルです
本メディアはRaiseTech(PISTEC株式会社)が運営しています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」の職業別表(2026年10月21日取得)。「全国計 常用(パート含む)8年8月」および「全国計 対前年同月比、差」によります。ハローワークが扱った求人・求職のみの集計で、人材紹介・求人媒体・ダイレクトリクルーティングは含みません。紹介件数に対する就職件数の割合(約6.5%)は本記事での計算で、公表値ではありません。
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