「若手のエンジニアを採りたいが、応募が来ない」
「来ても、内定を出す前に他社へ行ってしまう」
この記事は、そんな課題を持って「若手エンジニア 採用」と検索した採用担当者の方のために書きました。
結論から言うと、若手が採れないのは「若手が少ないから」ではありません。若手は最もよく動いていて、しかも動くほど得をしています。20〜24歳では転職で賃金が増えた人が減った人を37.7ポイント、25〜29歳でも25.9ポイント上回っています(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表6)。
つまり市場に出てきた若手は、よい条件を選べる立場にいます。待遇で並べないなら、別の軸で選ばれる理由を作るか、育成前提に切り替えるかのどちらかです。この記事では、その判断材料を数字と法令から整理します。
若手は「動くほど得をする」|年代別の賃金変動
厚生労働省の雇用動向調査は、転職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかを年齢階級別に集計しています。

| 年齢 | 増加 | うち1割以上 | 変わらない | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|---|---|
| 19歳以下 | 63.6% | 39.1% | 18.2% | 15.4% | +48.2pt |
| 20〜24歳 | 55.2% | 44.2% | 19.9% | 17.5% | +37.7pt |
| 25〜29歳 | 49.8% | 34.2% | 25.0% | 23.9% | +25.9pt |
20〜24歳では、44.2%が1割以上の増加です。転職した4人に1人以上ではなく、10人に4人以上が1割以上賃金を上げています。
これは採用側から見ると、次の意味になります。
- 市場に出てきた若手は、前職より良い条件を引き出せる見込みが高い。現職と同水準の提示では動かない
- 自社の若手も同じ条件で動ける。採用と定着は同じ構造の裏表になっている
- 年齢が上がるほど上げ幅は縮む(19歳以下 +48.2pt → 25〜29歳 +25.9pt)。若いほど交渉力が強い
採用が難しい理由全般の分解はエンジニア採用が難しい5つの理由、入社後に辞めさせないための打ち手はエンジニアの早期離職を防ぐにまとめています。
なぜ「若手ほど上がる」のか
統計はここまでしか言いません。以下は、賃金テーブルの作り方から説明できる範囲です。
多くの企業で、20代前半の賃金は年功で決まる部分が大きく、個人の成果との差が開きやすい状態にあります。社内では「入社◯年目」の枠に収まっているのに、外では「できることの量」で値付けされるため、できる人ほど外のほうが高くなります。
1割以上の増加が19歳以下で39.1%、20〜24歳で44.2%あるのに、25〜29歳では34.2%に下がるのも同じ説明がつきます。年次が進むほど社内の賃金が追いついてきて、外との差が縮むからです。
採用側にとっての意味は2つです。
- 20代前半は他社から引き抜ける余地がいちばん大きい。ただし同じ理由で、自社の20代前半も引き抜かれやすい
- 25〜29歳は、賃金だけでは動きにくくなる。+25.9ポイントは依然として高いものの、1割以上増える人の割合は10ポイント下がっている。この層には仕事の中身で訴求するほうが効きます
なお、これは全産業の数字で、IT業界に限ったものではありません。エンジニアだけを取り出した年代別の賃金変動を、国の統計は公表していません。
「第二新卒」という区分は、統計には存在しない
求人媒体では当たり前に使われている言葉ですが、国の統計に「第二新卒」という区分はありません。雇用動向調査が入職者を分けているのは、次の3つだけです。

| 区分 | 2025年の人数 | 入職率 |
|---|---|---|
| 転職入職者(前職がある) | 5,061.8千人 | 9.9% |
| 未就業入職者(前職なし) | 2,465.0千人 | 4.8% |
| うち新規学卒者 | 1,275.8千人 | — |
いわゆる第二新卒は、統計上は「転職入職者」に入ります。新卒とは別の枠ではなく、転職者の中の若い層という位置づけです。
これを踏まえると、社内で「第二新卒枠」を作るときに決めておくことがはっきりします。
- 新卒と同じ初任給テーブルに載せるのか、中途の等級に載せるのか。統計上は転職者なので、前職の賃金と比較されます
- 「卒業後3年以内」のような年数の条件を付けるのか。付ける場合は、次の章の年齢制限のルールにかかることがあります
- 選考フローを新卒側に寄せるのか中途側に寄せるのか。候補者は中途の感覚で動いています
年齢で絞れるのは、法令が認めた場合だけ
「若手がほしい」を求人票にそのまま書くことはできません。
労働施策総合推進法第9条により、募集・採用では年齢にかかわりない均等な機会を与えることが原則です。年齢で絞れるのは、同法施行規則第1条の3第1項が定める例外にあたるときだけです。

| 例外 | 条文 | 若手採用で使えるか |
|---|---|---|
| 定年を下回ることを条件とする | 第1号 | 使えない(上限側の話) |
| 法令で就業が禁止・制限されている業務 | 第2号 | 深夜業など。エンジニア採用では通常あたらない |
| 長期勤続によるキャリア形成を図る | 第3号イ | これを使う |
| 技能・ノウハウの継承、芸術・芸能、高年齢者の雇用促進 | 第3号ロ〜ニ | 若手採用では通常あたらない |
第3号イを使うときの2つの条件
この例外を使う場合、次の2つを満たす必要があります。
- 職業経験を不問とすること。「若手限定」と「実務経験3年以上」は同時に書けません
- 新卒者以外の者が応募できること。新卒だけに閉じるとこの例外にあたりません
- 期間の定めのない労働契約で募集・採用すること
1つ目が実務上いちばん効きます。「若手で、しかも経験者」という要件は、この例外では通せません。年齢で絞るなら経験は問わない、経験で絞るなら年齢は問わない、のどちらかです。
求人票に書く項目そのものはエンジニア求人票の書き方で、職業安定法施行規則の明示事項から整理しています。
待遇で並べないとき、何で選ばれるか
賃金で上回れないなら、候補者が賃金以外で比較できる材料を出すしかありません。若手は「次に動くときに何を持って出られるか」を見ています。
| 出せる材料 | 求人票・面談での書き方 |
|---|---|
| 入社後に触る技術が具体的に分かる | 言語・フレームワーク・クラウドを名前で書く。「モダンな開発環境」では何も伝わらない |
| 担当する工程の範囲 | 設計から入るのか、テストと保守からか。将来どこまで広がるか(変更の範囲)も含めて |
| レビューを受けられる体制 | レビュー担当が誰か、頻度はどれくらいか。若手がいちばん気にする部分 |
| 1人目かどうか | エンジニアが自分1人になる環境は、若手にとって成長機会が乏しい。隠さずに書いたほうが後のミスマッチが減る |
| 勤務地・リモートの条件 | 変更の範囲まで明示する |
どれもお金をかけずに書き足せるものです。そして上から3つは、賃金テーブルを動かすより早く変えられます。
育成前提に切り替えるときの判断
若手の経験者を待ち続けるか、経験を問わずに採って育てるか。切り替えるかどうかは、次で判断できます。

| 確かめること | 満たせないときに起きること |
|---|---|
| コードレビューができる人が社内にいるか | いないと、育成ではなく放置になる。ここが満たせないなら切り替えない |
| 立ち上がりの数か月を待てる計画になっているか | 即戦力の穴埋めとして採ると、双方が苦しくなる |
| 経験以外の評価基準を作れるか | 基準がないと面接官ごとに評価が割れ、決めきれずに流れる |
| 年齢で絞る要件を外せるか | 前章のとおり、経験不問とセットでなければ年齢では絞れない |
1行目が満たせるなら、残りは設計の問題です。評価基準の作り方は未経験エンジニアの見極め方とエンジニアのポテンシャル採用とは、面接の質問は未経験エンジニアの面接質問24選、入社後の立ち上げ方は未経験エンジニアの育成計画にまとめています。
未経験エンジニアの採用をお考えなら
若手の経験者を待つより、育成前提で採るほうが早いという判断になったとき、次に困るのは見極めです。実務経験がない候補者は学習の過程が見えないため、履歴書と数十分の面接だけでは材料が足りません。
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採用した企業の事例
クラウドインテグレーションを手がけるKDDIアイレット株式会社様(旧アイレット株式会社)では、業界経験者の採用が難しく、未経験採用を始めたものの内製カリキュラムが業界の変化に追随できないという課題がありました。
RaiseTechの受講生を複数名採用した決め手は、「高難度のカリキュラムをやり抜いた自走力・学習力」と、学習背景が可視化されていて採用判断がしやすかったことです。採用した人材は半年でグループリーダーに昇進し、教育コストも大きく下がったとのことでした。
紹介できるのは、AIエンジニア育成コース(旧Javaコース)とAWSコースの受講生です。Java・Spring Bootによるバックエンド、React・TypeScriptによるフロントエンド、AWSでのインフラ構築、CI/CDやテストまでを、課題に取り組みながら学んでいます。
→ 市場全体の求人倍率と、応募は来るのに決まらない構造はエンジニア採用市場の動向にまとめています。
よくある質問
「第二新卒歓迎」と求人票に書くのは問題ありませんか
「第二新卒」は年齢そのものを指す言葉ではないので、それ自体がただちに問題になるわけではありません。ただし「卒業後3年以内」のように実質的に年齢で絞る条件を付けると、年齢制限にあたる可能性があります。年齢で絞るなら、施行規則第1条の3第1項の例外にあたる形(経験不問・新卒以外も応募可・期間の定めなし)にしてください。
若手は辞めやすいので採りたくない、という判断は妥当ですか
本記事の数字が示しているのは「若手は転職で賃金が上がりやすい」ことで、「若手が辞めやすい」とは別の話です。年代別の離職理由はエンジニアの早期離職を防ぐで扱っています。採らない理由にする前に、自社で何が起きているかを確かめてください。
20代の経験者を採るには、賃金をどれくらい上げる必要がありますか
一律の正解はありません。ただ20〜24歳の44.2%が転職で1割以上賃金を上げているという事実は、現職と同水準の提示では動きにくいことを示しています。賃金で並べられない場合は、前章の「賃金以外で比較できる材料」を増やすほうが現実的です。
新卒採用と若手の中途採用は、どちらを優先すべきですか
自社の状況によります。判断材料として、2025年の新規学卒者の入職は1,275.8千人に対し、転職入職者は5,061.8千人と4倍近い差があります。母集団の大きさでは中途のほうが圧倒的です。
まとめ|若手が採れないのは、数が少ないからではない
- 20〜24歳は転職で賃金が増えた人が減った人を37.7ポイント上回り、44.2%は1割以上増やしています。市場に出た若手は条件を選べる立場です
- 「第二新卒」は統計上の区分ではありません。転職入職者の中の若い層で、前職の賃金と比較されます
- 年齢で絞れるのは、長期勤続によるキャリア形成(施行規則第1条の3第1項第3号イ)にあたるときだけ。その場合は職業経験を不問にする必要があります
- 「若手で、しかも経験者」は法令上そろえられません。どちらかを外してください
- 賃金で並べないなら、触る技術・担当工程・レビュー体制を具体的に出す。お金をかけずに今日から書き足せます
- 育成前提への切り替えは、コードレビューができる人が社内にいるかで判断してください
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出典:厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査結果の概況」表6・表3(2026年10月21日取得)。賃金変動状況は転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてみたもので、自営業からの転職入職者は含みません。全産業の数字で、IT業界に限ったものではありません。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条、同法施行規則 第1条の3第1項、職業安定法施行規則 第4条の2第3項(e-Gov法令検索・2026年10月21日確認)。
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