「未経験のエンジニアが増えすぎている」
検索すると必ず出てくる言い方です。ただこれは感想なのか、数字で確かめられることなのかがはっきりしません。
この記事では、厚生労働省がハローワークの求人・求職をまとめている職業安定業務統計から、「情報処理・通信技術者」の実数だけを見ます。先に結論を書きます。
求職は確かに増えています。2026年3月は前年同月比14.6%増、8月は11.1%増。職業計の4.7%増・3.0%増と比べると、3倍前後のペースです。ただし同じ時期、求人はそれ以上に動いています。
以下、求職側・求人側・倍率・決まり方の順に数字を並べ、最後にこの数字で言えないことを書きます。
求職は増えている。職業計の3倍前後のペースで
「増えすぎ」の前半部分は、数字に出ています。

| 新規求職申込件数(前年同月比) | 2026年3月 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | +14.6% | +11.1% |
| 専門的・技術的職業従事者(平均) | +5.2% | +3.2% |
| 職業計 | +4.7% | +3.0% |
新規求職申込件数は、その月に新しくハローワークへ求職を申し込んだ人の数です。情報処理・通信技術者は、2026年3月で5,996件、8月で5,648件でした。
見てほしいのは実数ではなく伸び方の差です。どの職業も求職は増えていますが、情報処理・通信技術者は職業計の3倍前後のペースで増えています。3月も8月も同じ向きなので、ひと月だけの振れではありません。
すでに登録していて仕事が決まっていない人を含む「有効求職者数」でも同じです。3月が36,127人で前年同月比5.0%増、8月が39,174人で6.4%増。職業計は0.6%増・1.3%増ですから、こちらも差がついています。
「増えすぎ」という言い方が指している現象そのものは、統計の上でも起きています。
ただし、求人のほうが先に、大きく動いている
ここからが本題です。求職の伸びだけを見ると話の半分しか見えません。

| 2026年3月(前年同月比) | 新規求人 | 新規求職 |
|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | −16.3% | +14.6% |
| 専門的・技術的職業従事者 | −2.4% | +5.2% |
| 職業計 | −2.9% | +4.7% |
3月の新規求人は前年同月比16.3%減です。職業計の2.9%減、専門的・技術的職業の2.4%減と比べると、下げ幅がおよそ6倍あります。実数は15,926件でした。
8月になると3.4%減まで戻っていますが、それでも職業計(4.1%減)と並ぶ水準で、プラスには転じていません。
つまり、この職業で起きているのは「求職が増えた」ではなく「求人が減りながら求職が増えた」の同時進行です。そして変化の幅が大きいのは求人側でした。
この違いは、打ち手を変えます。求職が増えただけなら「差をつける」話になりますが、求人が減っているなら「どこに求人が残っているか」を先に見る話になります。未経験から入りやすいIT職種の選び方で、職種ごとの入口の広さを厚労省の基準で比べています。
倍率で見ると、まだ求人のほうが多い
ここは誤解されやすいところです。「増えすぎ」=「求職のほうが多い」ではありません。
| 新規求人倍率 | 2026年3月 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | 2.66倍(前年差 −0.98) | 2.88倍(前年差 −0.43) |
| 専門的・技術的職業従事者 | 2.84倍 | 3.18倍 |
| 職業計 | 1.82倍 | 1.98倍 |
新規求人倍率はその月の新規求人数 ÷ その月の新規求職申込件数です。2.66倍なら、新しく申し込んだ1人に対して新しい求人が2.66件あるという意味になります。
情報処理・通信技術者は3月も8月も職業計を上回っています。数の上では、いまも求人のほうが多い職業です。
一方で前年差はどちらもマイナスで、3月は1年で0.98ポイント下がっています。水準は高いまま、向きは下です。「まだ求人のほうが多い」と「去年より厳しい」は、同時に成り立ちます。
なお専門的・技術的職業全体の平均(2.84倍・3.18倍)より下にいる点も見ておいてください。「技術職の中では特に有利」という状態ではなくなっています。
体感が厳しくなる理由は、決まる割合のほうにある
倍率が職業計より高いのに「増えすぎて入れない」と感じるのはなぜか。紹介された後に決まる割合を見ると、別の景色が出てきます。

| 2026年3月 | 紹介件数 | 就職件数 | 同じ月の比 |
|---|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | 6,313 | 461 | 7.3% |
| 専門的・技術的職業従事者 | 46,188 | 19,441 | 42.1% |
| 職業計 | 352,962 | 114,632 | 32.5% |
| 2026年8月 | 紹介件数 | 就職件数 | 同じ月の比 |
|---|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | 5,593 | 361 | 6.5% |
| 専門的・技術的職業従事者 | 32,905 | 9,389 | 28.5% |
| 職業計 | 259,497 | 67,232 | 25.9% |
この比は、同じ月の紹介件数と就職件数を並べただけのもので、通過率ではありません。3月に紹介された人が8月に決まることもあるので、同じ人を追いかけた数字ではない点に注意してください。
そのうえで、情報処理・通信技術者はどちらの月も1桁%で、職業計の4分の1以下です。しかも紹介件数のほうは3月が12.3%増、8月が10.8%増と増えています。紹介は増え、決まる数は増えていない。これが「応募しても通らない」という体感の正体に近いところです。
選考の中身については未経験エンジニアの現実、入った後に何が起きるかは未経験エンジニアの後悔にまとめています。
この数字で言えないこと
ここまでの数字には、はっきりした限界が3つあります。先に書いておきます。
| 言えないこと | なぜか |
|---|---|
| 「未経験者が」増えているとは言えない | 職業安定業務統計に経験年数の区分が無い。求職者が未経験か経験者かは分からない |
| IT転職市場の全体とは言えない | ハローワークを通った求人・求職だけの数字。ITは民間の転職サービス経由が多く、そちらは含まれない |
| 職種ごとの差は見えない | 「情報処理・通信技術者」は開発・インフラ・運用などをまとめた区分。中の内訳は公表されていない |
とくに2つ目は大きい制約です。この統計は「全体の向き」を知るためのもので、自分が受ける会社の難易度そのものではありません。
それでも使う価値があるのは、公的な統計で、毎月同じ定義で出ていて、職業計という比較相手があるからです。個人の体感には比較相手がありません。
「スクール卒業生が何人増えたか」という数字を探した方もいると思いますが、これを継続的に集計した公的な統計はありません。出回っている人数は、各社の公表値か推計です。
増えているなかで、何を見て決めるか
ここまでの4つを並べると、やることは絞れます。
- 求職は増えている。職業計の3倍前後のペースで、3月も8月も同じ向き
- 求人はもっと動いている。3月の新規求人は16.3%減で、職業計の6倍近い下げ幅
- それでも倍率は職業計より高い。求人のほうが多い状態は続いている
- 決まる割合は1桁%で、紹介は増えている。入口は広いが、通るところで詰まっている
4つ目が効いてくるのは「どの求人に向かうか」を決める場面です。同じ時間を使うなら、求人が減っている領域より、増えている領域に向けたほうが、通る確率は上がります。
どこから手を付けるかは未経験からのエンジニア勉強は何から、職種ごとの入口の広さは未経験から入りやすいIT職種の選び方、転職全体の進め方は未経験からエンジニアに転職する完全ガイドにまとめています。
契約の形でも見える景色が変わります。SESの案件ガチャは本当?では、配属が誰の判断で決まるのかを契約の型から整理しています。
未経験からITに入るなら、いまはAI側から
求人が減っている局面では、どの領域に向かうかの差が、そのまま通る確率の差になります。
開発系の中でも、AIを使った開発は求人が増えている領域です。しかも未経験から入る人にとって不利が小さいという特徴があります。全員にとって新しい技術なので、経験年数の差が他の領域ほど効かないためです。
→ 職業としての全体像はAIエンジニアとは?完全ガイド、将来性はAIエンジニアの将来性、飽和しているかどうかはAIエンジニアはオワコン?にデータでまとめています。
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未経験からエンジニアになった受講生の実績
「本当に未経験からなれるのか」は、実際になった人を見るのが一番早いです。いずれもAWS・Javaコースの卒業生ですが、「未経験から学び、作ったものを見せ、転職する」という道筋は職種が変わっても同じです。
事例①:完全未経験から半年でWebエンジニアへ|年収250万円→600万円
プログラミング完全未経験からJavaコースを受講し、受講開始から半年でWebエンジニアとして転職。フルリモート・残業ゼロの働き方になりました。特別な才能があったわけではなく、講義に毎週出席し、分からないことをその週のうちに質問で解消する、という当たり前のことを止めずに続けた結果です。
事例②:30代後半・未経験からクラウドインフラエンジニアへ
30代後半、AWS未経験からAWSコースを受講。キャリアチェンジ後の最初の職場で年収600万円に到達し、フルリモートで働いています。前職までの社会人経験は、エンジニアになってからもプロジェクトの進め方や顧客とのやり取りで強みになります。
事例③:SESから年収800万円へ
本業に副業を足して年収800万円に到達した事例です。入ったあとの伸び方の一例として参考になります。
→ スクールを使うかどうかで迷っている場合は、未経験向けプログラミングスクール比較11選で11社を受講料・給付金・対象職種で比べています。
よくある質問
未経験エンジニアが何人増えたかの統計はありますか
ありません。公的な統計に「未経験かどうか」の区分が無いためです。この記事で使った職業安定業務統計も、求職者の経験年数は集計していません。人数を挙げている情報は、各社の公表値か推計だと思って読んでください。
求人が減っているなら、いま目指すのは遅いですか
減っているのは新規求人の前年同月比であって、求人の数そのものは職業計より多い状態が続いています(新規求人倍率2.66倍・2.88倍)。遅いかどうかより、減っている領域と増えている領域のどちらに向かうかのほうが効きます。
ハローワークの数字は、IT転職の実態に合っていますか
一致はしません。ITは民間の転職サービス経由が多く、この統計に入らない求人・求職があります。使えるのは「全体がどちらに動いているか」までで、個別の求人の難易度は分かりません。この記事でも、職業計との比較だけを見ています。
「増えすぎ」はAIエンジニアにも当てはまりますか
この統計には「AIエンジニア」という区分がありません。AIエンジニアはオワコン?で、AI側の飽和説を別のデータで整理しています。未経験向けの求人がどれだけあるかはAIエンジニアの未経験求人がない?にまとめました。
「やめとけ」と言われるのも、増えすぎが理由ですか
理由はそれだけではありません。「AIエンジニアはやめとけ」7つの理由で、言われる理由を1つずつ分けています。市場の話と、働き方の話と、適性の話は別のものです。
まとめ|増えているのは求職。もっと動いているのは求人
- 情報処理・通信技術者の新規求職は、2026年3月が前年同月比14.6%増、8月が11.1%増。職業計の4.7%増・3.0%増の3倍前後のペースです
- 同じ3月、新規求人は16.3%減。職業計の2.9%減と比べて6倍近い下げ幅で、変化が大きいのは求人側でした
- 新規求人倍率は2.66倍・2.88倍で、職業計(1.82倍・1.98倍)より高いまま。数の上では、いまも求人のほうが多い職業です
- 紹介件数に対する就職件数の比は7.3%・6.5%で、職業計の4分の1以下。紹介は増えているのに決まる数が増えていません
- ただしこの統計に「未経験」の区分は無く、ハローワーク経由に限られます。全体の向きを知るための数字です
本メディアはRaiseTech(PISTEC株式会社)が運営しています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」参考統計表(令和8年3月分/令和8年8月分、2026年11月1日取得)。本記事の数値はいずれも「全国計・常用(パート含む)・原数値」の職業別表にある「情報処理・通信技術者」「専門的・技術的職業従事者」「職業計」の行です。季節調整値ではありません。
職業安定業務統計は、公共職業安定所(ハローワーク)が扱った求人・求職・就職だけを集計したものです。民間の職業紹介事業者や求人サイトを通じた分は含まれません。また求職者が未経験か経験者かの区分はありません。「紹介件数に対する就職件数の比」は本記事で同じ月の2つの数を並べたもので、同一の人を追跡した通過率ではありません。
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